む☆げん愛


“運命の人”に気をとられていた私に女の人が気付く。





『外来の患者さん……
の、お友だちよね?』





「はは……どうも…」





力なくそう言って、慌てて地面に視線をやる。





私のまぶたは重く少し熱をもっていて





泣き腫らしたことがバレてしまうと思ったから。






『どうしたの?
こんなところで……』





優しい声と共に手を握り
腰を屈める女の人。





あー、あのときの看護婦さんだ。






私が



“早坂しゃん!”




と噛んでしまったとき






ニコニコと女神のような笑顔を向けていた看護婦さん。




キュッとひとつに束ねられた長い黒髪は
女の私でも触れたくなるくらいにきれいで




スラッと高めの身長は
どこかのモデルさんのようだった。






切れ長の目をくしゃっとさげれば
きれいめからかわいい系に変身する。






そんな女神の笑顔に吸い込まれるように




一瞬、見惚れてしまったんだ。




「私…今どんな顔してますか?」





顔を伏せて隠したつもりだったのに、バレバレだった。






『……んーーー…
……ここにいて!

早坂先生!わたしちょっとコンビニ行ってきます!』





そう言うと、女神は走って行ってしまった。





< 118 / 411 >

この作品をシェア

pagetop