む☆げん愛


『お母さんと口論して
泣いて家を飛び出してきたのに、どこに帰るつもりなんだ??』






「………。」





ことばが出て来ない。




口をあーーーんぐりとあけたままで次のことばを待った。






『あー……
図星だった?
透っけすけだなぁ。ハハッ!』





なんだか本当にぜんぶ見られてるような気がして恥ずかしくなった。






両手をクロスさせて自分をギュッとする。






『あぁっ?
寒いか?家出するなら夜のことも考えてこいよな…』




そう言って薄手の黒いナイロンパーカーを脱ぐと私の肩にかけてくれた。





(寒かったわけじゃないんだけどな…)





そう思ったが、言わないことにした。





パーカーに残った優しい温もりと、ほのかなタバコの匂いは




その持ち主の
荒々しさの中にある優しさを伝えていて





包まれているだけで極上の気分にしてくれる。




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