む☆げん愛
『そんな日にね…
見つけたんだ。
絵本コーナーにいる愛音ちゃんを……
その瞬間ね、かっこ悪いけど、“運命?”とか思っちゃったんだ。
俺はいてもたってもいられなくてすぐに声をかけた。
はじめはね、似てると思って声かけたんだ。
前の彼女に…』
「似てるから声かけたの?
お兄さんの言ってた、“代わり身”ってこと?
前の彼女と私を重ね合わせて見てただけなんだよね?」
『ちがうよ!!』
見上げたら、吉井君の瞳は変わらずまっすぐだった。
「……。
確かに愛音ちゃんは似てるんだ。
前の彼女に……
笑い方とか、少し抜けてるところとか、絵本好きで、“ジョン・カール”が好きなところとか。
だけど代わり身だなんて思ってない。思う分けない。」
スタッ!!突然にソファから立ち上がる吉井君。
少し荒い口調。
顔が苦しそう。
吉井君の心の中には、まだ彼女がいるんだ・・・
“代わり身だなんて思ってない。思う分けない。”
これはきっと自分に言い聞かせた言葉なんだね。
「吉井君…さっきの、同じ大学行く話、少し考えさせて……頭の中整理したい。」
『わかった。』