む☆げん愛
*ヒミツ(2)*
吉井家を後にする。
さっきまでの豪雨は嘘みたいで、きれいな夕焼け空が広がっていた。
雨の残り香が漂う中、トボトボ歩く。
吉井君は“家まで送る”と言ってくれたが、それは断った。
もう、吉井君には甘えちゃいけない。
吉井君だって、まだ向き合わなくちゃいけない問題がある。
私が傍にいては吉井君だって前に進めない。
そんな気がした。
《―プップ―》
クラクションの音。
背後には真っ黒な高級車がシルバーのエンブレムを誇張させながら近づいていた。
『乗ってく〜?親父の車借りたんだ』
「お兄さん!!!」
吉井君のお兄さんが窓からヒョイと顔を出している。
「けっこうです。歩いて帰りますから」
『その格好で?』
………!!!!////