む☆げん愛
今日のオペも上手くいった♪
俺は意気揚々とナースステーションに戻り、後輩たちに縫合の手ほどきを見せていた。
『先生!早坂先生!』
声の方を向くと、花戸さんに面会にきていたのであろう愛音が、不安そうな顔で俺を呼んでいる。
…………??
俺はナースステーションを出た。
大きな受付窓越しに看護師や医者仲間、後輩たちの視線を感じながらも質問する。
「どーした?」
『中田さんが…中田さんが…すごく、苦しそうで。
さっきからずっと嘔気があるみたいで……
みんな、心配してて…』
「あー、あれ?
大丈夫だよ。まぁ、船酔いみたいなもんだ。
オペ室に行くまでの振動やらでも酔うし。
時間がたてば…」
『そんな!それを説明とかって…しないんですか?
苦しそうで、ご家族もみんな、心配してらっしゃるし……』
「うーん、特に説明はしないな。
あとは看護師さんに任せてあるし……」
『でも!!主治医は早坂さんなんだし、やっぱり、先生から‘大丈夫’って聞かされたほうがみんな安心すると思うんです……』
斜め下から、グッと俺を見上げて唇をかみしめている愛音。
言いにくかったんだろう…
頬真っ赤だし。
どんだけ必死なんだよ……――。