む☆げん愛
*サキさん*
わたしたちは3人で近くのカフェに入った。
途中、梶山先生に‘大切にされてるのね’って耳打ちされたけど、いまいちピンとこなかった。
何を話すんだろう。
私はどうなるんだろう。
そんなことばかりが頭をよぎってしまう。
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白熱灯で照らされている店内はうす暗くて、恋人同士でくれば隠れ家みたいな雰囲気で楽しめるんだろう。
だけど、今の私たちには余計に気分を暗くさせた。
私と早坂さんは並んで、梶山先生と対面して座った。
ブラックコーヒー2つとミルクティーが運ばれてきた頃、梶山先生が重い口をひらいた。
『サキが今なにしてるか知ってる?』
「ごめん、知らない。
消えたんだ、突然。
電話もつながらなくなった。
神隠しにでもあったかのように、俺の前から消えたんだ。
ミキをたずねることだってできたけど、サキに何か悪いことが起きたんじゃないかって……
俺のせいで……って思ったら、動けなかった』
『あの子ね、今アメリカの楽団と契約を結んで、専属でピアノを弾いてるわ。』
『そう、なんだ…元気なの?』
『うーん…
あまり元気ではないわ。
商業放送会社の所有する楽団で、サキはアジアンビューティープレイヤーとしてマスコット的な存在なのよ。
その会社のオーナーに気に入られてね。
ほとんど終身契約状態で、
体重の増減も許されない。
髪の長さだって変えられない。
もちろん恋愛もご法度だし。
毎日、世界各国の演奏会を飛びまわされて、もうクタクタだって言ってたわ』