む☆げん愛



目の前に並べられたシフォンケーキ。






『とりあえず食え!

おまえが暗い顔してたら花戸さんはもっと辛いだろ。
それ食って笑え。』




「だって、私、けいちゃんに何もしてあげられなかった。

どうしたらいいんだろう…」






『あのなー、今は待つしかない。

花戸さんが自分で解決するのを。


だいたい、お母さんはまず自分を責めるんだ。


花戸さんの場合は、予定より1ヶ月以上も早く生んでしまった自分を責めてるんだ。


だけど、あれだけ径管の長さが短くて、ここまでよくもったよ。


羊水もきれいだったから細菌感染も考えられない。


ということは、ベビちゃんの成長が、こういう結果につながったんだ。

それしか考えられない』





「赤ちゃんが成長して、もう苦しいから、出ますってこと?」





『そう。だから何も、誰も、責めることなんてないんだ。』





「そっか…、赤ちゃんが成長したから。

だったら、暗い顔してるのはおかしいですね。

早坂さん、今の話、けいちゃんにも聞かせてあげてくださいね?

けいちゃんはきっと、自分から弱音なんて吐かないと思うから…」





『あぁ、わかったよ』





目の前のケーキを一口食べてみた。




おいしい…




生地がふわふわで柔らかくて、甘すぎないクリームがよく合う。





自然と顔もほころぶ。




やっとちゃんと笑えた気がする。





今日、早坂さんに会わなかったら、きっと夕飯ものどを通らなかったんだろうな…――。





< 397 / 411 >

この作品をシェア

pagetop