怖い男達
 ゴンゾウはテンコのところに向かう道中も、眉間に皺を寄せ考えている。もちろんテンコのことだ。テンコが俺にだけコメントをくれていれば、こんな手荒なことは思いつかなかっただろう。でも直接テンコに会って、テンコが反省してくれさえすれば何もかも元通りだ。

 テンコ、テンコ、君は俺だけと仲良くしてればいいんだよ。

 不気味な薄笑いを浮かべながら歩みを進める。

 潮の香りがする海沿いの道に出たゴンゾウは、キョロキョロと周辺を見渡した。目を凝らすと、海沿いに一軒だけレストランが見える。

 あれだ……。あのレストランの隣りにあるアパートにテンコがいる。

 やっとテンコは俺だけのものになるのか。待てよ、もしかしたら家に旦那がいるかもしれないな。逸る気持ちとは裏腹に、不安な気持ちもあった。けれどもゴンゾウは引き返さず、不吉な薄笑いを浮かべると少しずつテンコに近づいて行ったのだった。
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