怖い男達
 老人には彼氏の振りをして、ゴンゾウはついにテンコの住む二○三号室の前に立つ。

 会いにきたよ、テンコ。心の中でそう呟くと、勢いよくチャイムを押す。

 ピンポ~ン! ピンポ~ン!

 ドアが開いた瞬間、ゴンゾウは倒れそうになった。


「どなたですか?」


 目の前には、身体の大きい無精髭の男が立っている。

 もしかして、こいつが旦那か? そう思っても、引き返す気はさらさらなかった。


「奥さんはいますか?」


 目の前に立つ大男を見据えると、そう訊いた。

 大男は目を見開き、ゴンゾウをまじまじと見たまま、石像のように固まっている。

 ははぁ、こうやって他の男がテンコに会いに来るのは初めてじゃなさそうだな。ゴンゾウは、大男を見据えたまま、そんなふうに思ったけれど、あることに気が付いた。

 あれ? もしかして、テンコの旦那じゃなくて兄貴っていう可能性はないか?

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