片思い?両思い?
「おねがい」
早苗が抱きついてきた。
・・・おい・・・いい加減にしろよ・・・。
俺は早苗の肩を掴んで離そうとするけど、がっちり掴まれててなかなか離れない。
「お願い・・・日向・・・側にいて・・」
はぁ・・・。
「早苗」
俺は肩を掴んでいる手に力を入れる。
「いい加減に・・・・しろ!」
俺の声と行動にびっくりしたような顔をする。
こんなにしっかりした俺は初めてだからな。
「早苗が好きなのは、俺じゃないだろ?」
俯いたまま何も言わない。
「俺に頼っても結局同じことの繰り返しだ。・・・本当に好きな奴を傷つけるようなことするな」
「・・・だって」
「だってじゃねーよ」
はぁ・・・。
「俺は困っていたら相談にはのるよ・・・でもそれは友達としてだ。それ以上の感情は俺にはもう無いんだよ・・・」
「日向・・・」
「それに、本音を言う相手を間違えてるだろ?」
俯いていた早苗が小さな声で本音を話し始めた。
「・・・我侭になれないの・・・」
「は?」
俺には我侭し放題だったのに?
「怖くて・・・恵一に嫌われるのが・・・怖くて・・・」
泣きながら言う早苗を、俺は椅子に座らせた。
それだけ恵一を好きだってことか・・・。
「今回の喧嘩は私が我侭を言ったから・・・日向は私の我侭に怒っても呆れても付き合ってくれた・・・だけど恵一は違うの・・・だからどこまで言ってもいいのか・・・どんどん分からなくなってきちゃって・・・」
「・・・なさけねぇ」
「・・・うん」
「早苗じゃねーよ」
「え?」
「恵一がなさけねぇって言ったの」
「な・・・んで・・?」