片思い?両思い?


「理沙ってさ、小さい頃の記憶が抜けてるってほんと?」

「・・・うん、小学校3年から5年生までの記憶が曖昧なの」

「お兄さんいたよな?年の離れた」

お兄ちゃん・・・。

「うん。8歳離れたお兄ちゃんがいたよ。私が10歳・・小学校3年生の時に死んじゃったけど・・・」

「覚えてる?」

「え?」

「お兄さんのこと」

「う~ん・・・なんとなくしか・・・母親の話だと私が車に轢かれそうになったのを庇って、亡くなったって・・・だから私が跡継ぎなんだって、そういい聞かされてきた」

「・・・そう・・・」

「事故のショックで記憶が無いのかもしれない・・・でも、何か違うこともあるような気がするの」

「違うこと?」

「うん・・・最近頻繁に頭が痛いのは、きっと過去の記憶が戻りつつあるんじゃないかって・・・でも、怖い」

「なぜ?」

「・・・わかんない。だけど体が、拒否するような感覚があるの・・・思い出すことをためらってるような・・・もしかしたら良いことではないのかも知れないよね・・・」

「俺さ・・・小さい頃理沙に会ってるんだ。・・・だけど、記憶の抜けてるところに俺も入ってるんだよ」

「そっか・・・じゃあ、記憶を取り戻さないと隆平のことがわからないってことなのね」

「そうなるな」

「・・・そっか・・・」

お兄ちゃんのことを思い出すのは怖い。

だけど、隆平のことを思い出したい。

・・・そういえば、私の頭痛がひどくなったのって、隆平と知り合ってからなんだよね・・・思い出したほうが良いって、頭のどこかでサインを送っているのかな・・・。


「・・・なんかしんみりしちゃったね」

「まぁな・・・でも、良かった」

「うん?」

「俺、愛想つかされたかと思った」

「・・・別れるの・・嫌?」

「当たり前だろ!」

隆平がそっと抱きしめてくれた。

「俺は理沙に会いたくて、会いたくてこの高校に入ったんだから・・・」

「・・・うん。ありがとう」

「・・・ってことで、久しぶりに・・・どうですかね?」

「・・・ばか」



その日は隆平の甘さに負けて、思いっきり甘い夜を過ごした。






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