片思い?両思い?


目が覚めると私の周りには誰もいなかった。

「あ、目が覚めた?」

様子を見に来てくれたのは

「純さん」

看護師の純さん、だった。

「あ!お、お兄ちゃんは!?」

事故のことを思い出した。

私の名前を呼んでくれたお兄ちゃん。

「・・・うん、今、手術してるよ」

「そうなんだ・・・お兄ちゃん死んだりしないよね?」

心配そうな私に

「うん・・・きっと大丈夫・・・皆頑張ってくれてるから」

笑顔で答えてくれる。

・・・だけど、このときお兄ちゃんは、もう亡くなっていたんだ。





記憶がどんどん戻ってくる。

今まで目を伏せて逃げていた現実が、突きつけられる。




純さんが戻った後、顔を出してくれたのは

「よお」

「いま君」

仲が良かったいま君。

「大丈夫か?」

「・・・うん」

「・・・実はさ、俺たち来週引っ越すことが決まったんだ」

え・・・・

「今までありがとう」

「・・・うん」

「・・・俺!必ずまた会いに来るから!理沙ちゃんに会いに来るから・・・」

いま君・・・泣いてるの?

「うん・・・楽しみに待ってるね」

「・・・うん。じゃ、またな」



そんな小さな小さな約束。

いま君は・・・・・隆平だったんだね。










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