片思い?両思い?
妹の喘息がひどくなって、入院していたときに知り合った院長の息子。
小野 啓斗さん。
当時17歳。
病院の跡継ぎとして期待されていた。
男の人なのにとても綺麗なひとで、儚げな人だった。
いつだったか俺に話してくれたことがある。
「隆くん・・・いいかな」
中庭に座っていると啓斗さんがやって来た。
「うん」
俺は当時小学校4年生。
啓斗さんが抱える不安やプレッシャーなど分かるはずも無い。
「・・・俺はさ、医者にはなりたくないんだ」
「・・・?」
突然の告白にビックリしたのを覚えている。
「俺は裏のほうで、この病院を支えたい。だけど院長はそれを許してはくれないんだ」
「・・・・」
「隆くんにこんなこと言っても仕方ないよね・・・だけど誰かに聞いて欲しかった」
「・・・うん」
「理沙のほうが医者には向いてると思うんだ。・・・俺は院長になれるような器じゃない。どうしたらわかってもらえるのか・・・。」
そう言って、空を見上げた啓斗さんがとても綺麗だった。
男の人に綺麗と言う言葉は失礼に当たるかな?
だけど、本当にそう思ったんだ・・・見惚れるほど綺麗な横顔だった。
「こんな話をしてごめん・・・それと、理沙をよろしく」
「あ、はい」
その時は良くわからなかった・・・何故俺なんかに理沙を頼んだりするのか。
だけど今ならわかる・・・あの時はもう、決めていたんだ。
それから3日後のことだった。
あの事故が起きたのは・・・・。