片思い?両思い?
思い切って記憶の事を聞いてみると、ビックリしたように俺を見たけど、答えてくれた。
「・・・うん、小学校3年から5年生までの記憶が曖昧なの」
ちょうど俺たちが出会った頃の記憶が抜けてるのか・・・。
どおりで俺のこと、わからないはずだよな。
啓斗さんのことは覚えているのかと思ったけど・・・やっぱり肝心なところは覚えていないみたいだ。
「うん・・・最近頻繁に頭が痛いのは、きっと過去の記憶が戻りつつあるんじゃないかって・・・でも、怖い」
そうか記憶が・・・。
「なぜ?」
「・・・わかんない。だけど体が、拒否するような感覚があるの・・・思い出すことをためらってるような・・・もしかしたら良いことではないのかも知れないよね・・・」
「俺さ・・・小さい頃理沙に会ってるんだ。・・・だけど、記憶の抜けてるところに俺も入ってるんだよ」
「そっか・・・じゃあ、記憶を取り戻さないと隆平のことがわからないってことなのね」
「そうなるな」
「・・・そっか・・・」
啓斗さんは自ら命を絶つことを望んでいた。
そのことを理沙が知ったら、どうなるんだろうな。
啓斗さんのこと、大好きだったもんなぁ。
啓斗さんの隣で嬉しそうに笑う理沙のこと、今でも鮮明に覚えてる。
ちょっと心配になって理沙をみると
「・・・なんかしんみりしちゃったね」
と、いつもの理沙らしい笑顔を見せてくれた。
「まぁな・・・でも、良かった」
「うん?」
「俺、愛想つかされたかと思った」
連絡無いし、しても返事くれないし・・本当に嫌われたのかと・・・。
「・・・別れるの・・嫌?」
「当たり前だろ!」
思わず抱きしめていた。
「俺は理沙に会いたくて、会いたくてこの高校に入ったんだから・・・」
「・・・うん。ありがとう」
ああ、久しぶりで、俺とまんねーよ・・・。
「・・・ってことで、久しぶりに・・・どうですかね?」
「・・・ばか」
琉太に聞いた話も気になるけど、今はそんな事どうでも良くて、理沙と過ごす甘い時間に酔い痴れた。