片思い?両思い?


・・・・暁先生が行っていた通り、自分がどれだけ苦痛だったかが書かれていて、この手紙を書いているときも、悩んでいたことがよくわかる。

最後は・・・私宛に一言。

『理沙。

すまない。

弱い兄貴で。

理沙の幸せを祈ってる』


・・・ずるい。

「ずるい」

思わず口にしまった。

「理沙」

「ずるいよ!ただ逃げただけじゃない!!」

「理沙・・・」

「こんなの、納得できない。・・・お兄ちゃんは自殺なんてするつもり無かったのよ」

「え?」

「こんなの、お兄ちゃんの本心じゃない。ただの愚痴よ・・・・・・そうよ。こんなの本心じゃない」

私は手紙を握りしめた。

違う・・・違う・・・私は同じ立場だから良くわかる。

お兄ちゃんは確かに悩んでいたのかもしれない。

だけど、自ら命を絶つような人じゃない。

命を・・・・命を大切にしてた人だった。

「どんなものにも命があるから、大切にしろ。医者になるならなおさらのこと。命を救うのが俺たちの使命だから」

お兄ちゃんは私にそう言った。

幼い私は何を言っているのか、はっきりとは理解できずにいたけど・・・命は大切なんだってことを教えてくれたのはおにいちゃんだった。

飼っていたインコが死んだとき、泣きながら一緒に埋めてくれたのもお兄ちゃんだった。

捨て犬を拾ってきて怒られたとき、「一緒に飼うから」と両親を説得してくれたのもお兄ちゃんだった。

私はお兄ちゃんがいたから、医者を目指そうと思った。

一緒に医者になってお兄ちゃんを助けたかったから。

そんな人が・・・自分から命を捨てるはずなんてないんだ。





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