片思い?両思い?
「一人ですか?お友達は?」
優しく微笑むその姿は、やはり社長婦人だ。
「俺、一人です」
すると香奈枝さんは
「じゃ、ナンパしちゃお」
と、悪戯っぽい笑顔を見せた。
「え?」
社長婦人とは思えない言葉に驚く。
今、ナンパとか言わなかった・・・・か?
「少し私とおそこでお茶しませんか?」
と、近くにあるカフェを指差した。
「あ、はい」
断る理由も無かった俺は、香奈枝さんに着いていくことにした。
中に入って椅子に腰を下ろす。
コーヒーを2つ頼むと、香奈枝さんは俺に話を始めた。
「理沙ちゃんとは、うまく行ってる?」
「え・・・いや、あの・・・・」
「悩んじゃった?」
「え?」
「この前、家に来たときと帰る時の顔が違ってたから、何か感じたことがあるのかなって思ってね」
するどい。
あの短時間でそんなこと解るのか?
しかも初対面なのに・・・。
「フフ・・なんで解るのかって?」
「え・・・あ、いや・・・」
「洸一と一緒になるときにね、一度あった人の顔は忘れるな。人の感情に気をつけてみろ。気になったら話しかけて確かめろ。って言われてね・・・長年やってたら癖になっちゃって・・・ま、要求はすご~く沢山あったんだけど。でも、そのくらいしないと洸一の隣にはいられないの。あの人凄い人だから・・」
微笑みながら香奈枝さんはコーヒーを飲む。
「大変だって思った事はないんですか?」
「あるわよ。今でも思うわ・・・だけどやめようとは思わないの」
確か香奈枝さんは一般人だったはず・・・。