とりかえっこしようよ


「ごめんね、お待たせ」


 今日は私がいっくんの車の助手席に座る。


「そんなに待ってないよ。かえって急がせちゃったみたいでごめんね」


 やっぱり、いっくんは気遣いができる人。



 どんどん好きになっちゃう。



 私、また赤くなってる!?


 恋愛に不慣れな自分が恥ずかしいよ……。



「もしかしたら、緊張してる?」


 運転しながら、いっくんが聞いた。

 ドライブ中だと、顔を見られずに話せるから、ちょっとだけ気楽、かも。


「え?ううん。そうじゃないんだけど、お父さん以外の男の人の助手席に座るの、初めてなの」


「本当?何か凄く嬉しい。これから、ここはひかりちゃんの席。好きなCDとか持ってきてもいいよ」


 私の席。


 私も嬉しいよ、とっても。


「昨日さ、あんなこと言っちゃったから、警戒して会ってもらえないかもって思ってた」


「え?そんなことないよ」

 かなり焦ったけど……。


「ひかりちゃんが嫌がることはしない。約束する」



 前を向いたまま、真剣な表情で話を続けている。



「ひかりちゃんが好きだから、無理強いはしたくない。でも、好きだから触れたい……」


 好きだから、触れたい。
 いっくんが確かにここにいてくれるっていう実感が欲しい。


 私も同じ。


「うん。私もいっくんに触れたいよ」


一瞬、いっくんがこっちを見た。


「触れても、いいんだね」




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