とりかえっこしようよ

 家の前に着いた。


「今日はありがとう。

また誘ってね」


「こちらこそ。

それじゃ、また明日」


 シートベルトを外そうと両手を金具にかけた時。



 いっくんの手が、私の右手を掴んだ。



「おやすみのキス、しようよ」


「え?」


 一瞬で固まった私を見つめるいっくんの眼は、笑ってる。


 どうすればいいの?私は次に何をするの?いや、されるの?


 ぐるぐると回るだけで働かない頭とは逆に、凄い勢いで働く心臓。





 ……もう、私はされるがままでいいんだ。


 いっくんが私の嫌がることをする訳がない。


 むしろ、こんなことくらいでびくびくしてたら、いっくんが逃げてしまうんじゃないだろうか?



 その時。




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