とりかえっこしようよ
私の右手の甲に、ほんの少しだけ、いっくんの唇が触れた。
「おやすみ、ひかりちゃん」
「お、おやすみなさい」
「あれ?もしかして物足りなかった?」
ち、違います!ただ、今までぐるぐる考えてたのは何だったのかって、ちょっとだけがっくりきただけ!
ん?がっくり?
「ダメだよ。
俺が送り狼にならないうちに、ちゃんとおうちに帰らなくちゃ」
名残惜しそうに、私の右手を離す。
けど、視線は離さないで、じっと私の様子をうかがっている。
ごめんね、恋愛超初心者の私に合わせてたら、きっとイライラしちゃうよね。
狼さん、ちょっとだけ、私も頑張ります!
シートベルトを外して。
「さっきの、お返し」
いっくんのほっぺにキスをひとつ。
「ひかりちゃん!?」
驚いて、目を丸くしてる。
ちょっと、大胆だった……かな?
急に恥ずかしさがが込み上げてきて、すぐに車から降りて逃げちゃった……。