とりかえっこしようよ
ひかりちゃんを夕食に誘ってみた。
昨日のことがあったから、もしかしたら断られるかと思ったけど、OKしてもらえた。
内心、かなりドキドキしながら誘って、返事が来るまで気が気じゃなかった。
ひかりちゃんの車の後をついて、今住んでいる家についた。
俺の家からもそれほど離れてはいない、日本家屋だった。
車の中で、ひかりちゃんが出てくるのを少しだけ待つ。
今はどんな曲が好きなんだろう?
今度、お気に入りのCDを持ってきてもらおう。
「ごめんね、お待たせ」
ひかりちゃんが戻ってきた。
「そんなに待ってないよ。かえって急がせちゃったみたいでごめんね」
気のせいか、ひかりちゃんが赤くなっているような……。
俺、相当警戒されてる?
「もしかしたら、緊張してる?」
「え?ううん。そうじゃないんだけど、お父さん以外の男の人の助手席に座るの、初めてなの」
……さらっと嬉しいことを言ってくれるんだよな、ひかりちゃんはさ。
「本当?何か凄く嬉しい。これから、ここはひかりちゃんの席。好きなCDとか持ってきてもいいよ」
良かった。どうやらまだそこまで警戒された訳ではないようだ。
「昨日さ、あんなこと言っちゃったから、警戒して会ってもらえないかもって思ってた」
「え?そんなことないよ」
「ひかりちゃんが嫌がることはしない。約束する」
15年も待ったんだから。
でも、正直な気持ちだけは伝えておこうと思った。
「ひかりちゃんが好きだから、無理強いはしたくない。でも、好きだから触れたい……」
「うん。私もいっくんに触れたいよ」
そんなこと言われたら……抑えろ、自分。
「触れても、いいんだね」