とりかえっこしようよ
右手の甲に、ほんの少しだけ、キスを落とす。
「おやすみ、ひかりちゃん」
「お、おやすみなさい」
ん?ちょっと期待はずれだったのか?
「あれ?もしかして物足りなかった?
ダメだよ。
俺が送り狼にならないうちに、ちゃんとおうちに帰らなくちゃ」
視線は逸らさないで、じっとひかりちゃんを見つめていた。
なんとなく、目が離せなかった。
早く逃げてくれないと、本当に帰したくなくなる。
シートベルトを外したひかりちゃんが、
「さっきの、お返し」
俺の頬にキスをした。
「ひかりちゃん!?」
まさか、彼女からされるとは思わなかった……。
びっくりしている俺をそのまま置いて、子羊は逃げていった。
後に残ったのは、かすかに頬に口紅をつけた俺……。
車の中で、ひとり、浮かれていた。