とりかえっこしようよ
疑念~同僚編2・side樹~
ぐったりしたひかりちゃんを見て、橋本を問い詰めた。
「彼女に何かしたのか!」
橋本と、一緒に居た須藤さんが驚いていたが、もういいと思った。
「別に何も……ただ話をしていただけだぞ」
嫌な予感がした。
「ちょっと、涼しいところへ移動させよう」
ひかりちゃんを抱きかかえて、廊下に出た。
「須藤さん、俺、彼女を送っていきますから、二次会欠席します」
「え? 森川君、松本さんの家を知ってるの?」
ひかりちゃんには内緒にしててって言われてるけど、仕方がないからこう言っておくか。
「幼馴染なんです。
小学校のとき、同級生でしたからよく一緒に遊びましたよ」
「そうだったの……ふ~ん、だから橋本くんの話を聞いて、様子がおかしくなったのね」
……やっぱりな。
タクシーに乗せて、ひかりちゃんの住んでいる町に向かってもらう。
悲しそうな顔で、うなされている。
「いっくん!」
突然呼ばれて、驚いた。
「ひかりちゃん、大丈夫?」
「いっくん?」
まだ呆然としているひかりちゃんに、とにかく謝った。
「ごめん」
「え?」
「俺、そばにいられなくて……」
橋本から、きっと俺の過去を聞いてショックを受けたんだろう。
俺が彼女のそばにいたら、こんなことを他人の口から聞かされなかったのに。
「嫌!嫌!嫌なの!」
突然、ひかりちゃんが泣き出した。
「ひかりちゃん……?」
「ずっとずっと待っていたのに!
大好きなのに!
置いてかないで……」
俺にすがりついて泣く彼女を、何とかなだめようと思った。
「運転手さん、すいません。
目的地を変えます……」
驚いた顔で見つめられたけれど。
「そんなに泣いたまま帰ったら、お家の方が心配するだろ?」