とりかえっこしようよ
素早く状況を察知したらしいいっくんが、私の隣に立った。
「こんにちは。
昨日は二次会に参加できなくてすみませんでした。
おかげで彼女もすっかり元気になって、今日は朝から私の引っ越しの手伝いをしてくれてるんですよ」
……暗に「私は泊まっていない」と言ってる。
私の今日の服装はジーンズにチュニック。
昨日のスーツではない。
私達は不倫ではない。
圧倒的に気まずいのは課長達。
「課長と須藤さんはデートですよね!?」
にっこりと、邪気のない顔で笑っているように見える。
いっくんは採用されてからまだ日が浅い。
課長が既婚者である事を知らないのかも知れない。
二人は絶句したまま。
私はただ、成り行きを見守っていた。
「それでは、まだ買い物が残っていますので。
また月曜日から、よろしくお願いいたします。
ひかりちゃん、行こうか」
いっくんが手をつないでくる。
私もとりあえずぺこりとおじぎをして、その場を離れた。