とりかえっこしようよ
「そうだったんですか……」
私にとっては当たり前だった
「おめでとうございます」という言葉。
このお母さんには、そんなに深い言葉として残っていたなんて。
「まだ入籍していないことを打ち明けたら、母子手帳の名字の記入だけ、薄い鉛筆書きにしてくれましたよね?
他の担当の方はボールペンで書いているから、入籍してからも訂正の跡が残った、なんて話も聞きました。
あなたの心配りが嬉しくて、忘れられなかったんですよ」
私が何気なくしていた事を、こうして感謝してもらえるなんて。
「私の方こそ嬉しいです。
こんなお話が聞けるなんて、感激しました。」
上の子とお父さんが戻ってきた。
「デートの邪魔をしてしまってごめんなさい。
いつか、お二人のところにも可愛いお子さんが生まれるといいですね。
子どもって、本当に可愛いんですよ。」
いっくんと顔を見合わせて、赤くなってしまった。