とりかえっこしようよ
カレーはほぼ出来上がり、サラダもあとは盛り付けるだけになったとき。
キッチンにいっくんが来た。
「いい匂い」
「もうちょっとで出来上がるよ」
「何か、手伝うことはない?」
「ふふっ。
今日はカレーとサラダだけだから、特にないよ。
向こうで待っててね」
「そっか。
じゃあ、おとなしく待ってるよ」
こんな何気ない会話も、なんてことないカレーも、いっくんと一緒だと特別になる。
二人で食べる、はじめてのおうちごはん。
楽しくて、嬉しくて。
でも、ちょっぴり切なくなった。
今頃須藤さんはどうしてるのかなって。
土曜日の夜だもん、きっと課長は家族と過ごしてる。
須藤さんは?
もしかしたら、泣いてるんじゃないかな?
苦手な先輩だったし、今でもやっぱり怖いけど。
手の届かない相手を想い続けるのは、どれほど辛いか。
ずっといっくんを待っていた私にも、少しだけ解るから……。