とりかえっこしようよ
「何を考えてるの?」
つい黙り込んでしまった私を、いっくんが気遣ってくれる。
「……須藤先輩のこと。
今頃、どうしてるかなって」
「修羅場のあと、かな?
課長は家庭に戻るんだろうし……」
やっぱり、いっくんも同じ考えだった。
「俺はさ、二人の事をよく知らないけど。
どっちも不毛だよな~って思う。
仮にこの二人が結ばれたとしたって、それは結局、他者の犠牲の上に成り立つ幸せだろ?
それって本当の幸せなのかな?
自分達が幸せで笑っているとき、それによって壊された幸せを嘆き悲しむ犠牲者が常に存在するってことだから。
どっちが悪いとかではないにしろ、それを避ける方法はいくらでもあるんだからさ。
それに俺には、二人を同時に愛するなんて器用な真似は絶対にできないな」
……ごめんね、いっくん。
大学2年から付き合ってる彼女と私、二股かけられてると思ってたよ。
そんなことないって信じたかったけど、信じられる根拠がなかったの。
今の言葉は、私に対して『浮気はしない』って宣言してくれてるって受け取っていいんだよね?
「うん。私はいっくんがそんなことしないって信じるよ」
「当然だろ。こんな可愛い彼女がいるんだから」
嬉しいことをさらりと言ってくれる。
照れくさくて、急いで食器を片付けた。