とりかえっこしようよ


「ひかりちゃん、まだ、時間あるかな?」


食器を拭き終わった時、声をかけられた。


「今は……まだ7時だもんね。

今日は土曜日だし、大丈夫だよ」


ソファに座るいっくん。


その隣を空けて、私を待っているんだけど……。



昨日、ここでキスしたことを思い出して赤くなった。



勇気を出して、隣に座る。


「今日さ、レストランでの君を見て、やっぱりまだまだ追いつけないって思ったよ。

君が何気なくしていることって、普通の人がものすごく気を遣ってしていることなんだよね」


「そんなこと……」


「役人っていう言葉、正直あんまり好きじゃないんだけど、もともとこれって『人々のお役に立てる人』という意味で使われてたんだよね。

それが今じゃすっかり、立場が逆転したようなイメージだ。

きっと、君みたいな人ばかりの役所だったら、この街も良くなるような気がする」


いっくん、褒めすぎだよ。


「君のように、本当の意味での『お役に立てる人』になれるのは、いつだろうって考えさせられたよ。

与えられた仕事をするだけではなく、ちゃんと心のこもったサービスを提供できるようになるまで、あと何年かかるのかな……」










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