とりかえっこしようよ
 
 カズくん、なぜか気をつけ!の姿勢になって、私と向き合った。



 いつものちょっと皮肉な笑顔とは違う、真剣な顔だった。

 
 じいっと私の顔を覗き込まれる。


 カズくんの切れ長な眼に、呆然と見上げた私の顔が映ってる。


 

 両肩に大きな手を置かれて、私は逃げ出したくても逃げ出せなくなった。


 このまま、ここにいてはいけない気がする。




「俺は光が好きだ。離れてる樹には負けない。そういうことだから」
 







 カズくん、本気なの?


 本気なんだね。冗談でそんなこと言う人じゃないもん。


 でも、何で私なの?

 

 カズくんの顔を直視できなくなった私は、顔を横に背けて


「あの……カズくん、どうして私なの……?」って言っちゃった。


「どうして? 可愛いからに決まってるだろ。あ~、見た目だけじゃなく、性格がさ。何か、守ってやりたいんだよ」



 

 カズくん、今、さらっと「可愛い」とか言わなかった!?


 男子からなんて、言われ慣れてないんだってば、そういう言葉!


 
 あ、ずっと前、いっくんが私の写真を見て「かわいい」って書いてくれたっけ。


 初めて「かわいい」って言ってくれた男の子は、いっくんだったんだ。



 頭の中がぐるぐるして、どうしていいのかわかんなくなった。


 私の両肩に置かれたカズくんの手に、ぎゅっと力が入って引っ張られた。


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