とりかえっこしようよ
嘘!私、カズくんの腕の中にいる!!
学ランのボタンがほっぺに当たってて、頭のてっぺんには多分、カズくんの顎がくっついてる。
ぐるぐるしていた頭の中は、ついに真っ白になった。
ちょうどその時、お昼休み終了のチャイムが鳴った。
我に返ったカズくんが一言「ごめん」って言って、力を緩めてくれた。
それからどうやって教室に戻ってきたのか、覚えていない。
家に帰ってきて、いつもの通りハリーに出迎えられた。
「ねえ、ハリー。今日、私、カズくんに好きだって言われちゃった。なんだか訳わかんなくなってきちゃったよ」
ハリーに相談しても仕方がないんだけど、誰かに聞いて欲しかった。
とりあえず、私は机の引き出しからレターセットを取り出して、いっくんに今の気持ちを伝えようと思った。
学校の友達には相談できない。
また誰かに噂されたら、今度はカズくんに迷惑がかかっちゃう。
ホントは会いたいよ、いっくん。
会って、いっくんの顔を見たら、きっと泣いちゃう。
私、いっくんのことが大好きだよ。いっくんは特別だもん。
でも、手紙でそれを伝えるには、私の気持ちは複雑すぎたっていうことに後から気づいた。