とりかえっこしようよ
仕事と勉強~社会人編・side光~
研修期間が終わり、私は市役所の福祉部へ配属された。
主に子育て支援の仕事をする部署で、慣れないながらも毎日忙しく過ごしていた。
幸せいっぱいの妊婦さんに、母子手帳を渡して説明をしたり。
市で行われている乳児健診の案内を発送したり。
毎日、新しい仕事を覚えるのに必死だった。
歓迎会も行われたけど、まだお酒を飲めない私は早々に引き上げた。
本当は上司にお酌して回らないといけないんだろうけど、どうやっていいのかよくわからない。
こんな時、お父さんが生きていてくれたら、社会人としての常識なんかを教えてくれたんだろうな。
初任給で、お父さんの仏壇にケーキをお供えした。
甘党だったお父さん、ここのお店のケーキが大好きだったんだよね。
それを見て、またお母さんが泣いた。
「光、ごめんね。大学に行かせてあげられなくて……」
「いいんだよ、私、この仕事が楽しいから。大学を卒業しても、きっと市役所に勤務してたと思うし、近道できて良かったのかもね」
隣でハリーが「きゅううん」と鳴いた。