とりかえっこしようよ
 もう一人の先輩も、話に加わってきた。


「あなた、松本写真館の娘だったのね。確か2年位前まではお店、やってたと思うけど。もしかしてこの不況でつぶれたの?」



 明らかに悪意のある言い方。


「見かけによらず苦労してるのね~。そっか、だから高卒なんだ」



 その時、私の中で何かが弾けた。





「父は1年近く前に、がんで亡くなりました。うちにはまだ高校生の弟もいますから、私は進学できませんでした。でも、いつか働きながら大学へ行こうと思っています」



「ふ~ん、働きながらねえ。普通に通うだけでも大変だったけど、あなた根性ありそうだからいけるかもね。仕事に穴空けないように頑張ってね」




「はい、ありがとうございます。頑張ります」


 お父さんが見てる。


 いっくんもどこかで頑張ってる。


 私も笑顔で乗り越えなくちゃ。


 こんな皮肉、笑い飛ばさなくちゃね。
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