とりかえっこしようよ
 昼休み。


 同期と一緒に食堂へ行った。



「なあ、今夜一緒に飯どうだ?」


 同じ大学の橋本が誘ってきたが「引越しの片付けが終わっていない」といって断った。


 同期は俺を除いてみんなこの街の出身だから、親元から通っている。


「そっか。じゃあ、片付いたらみんなでお前んちに集合して飲み会な!」


 ……溜まり場にするのは勘弁してくれ。


「ところでさ、お前何でここの市役所に就職したんだ?」


「ここが好きだから、っていう理由じゃダメか?ここに落ち着きたいんだ」


「ふーん。いや、俺はここが地元だから、ここが好きって言ってもらえて嬉しいけどさ。でも、ホントのところ、どうなんだよ?」


 当然の反応だな。


 こいつにはひかりちゃんのこと、それとなく言っといたほうがいいか。


「彼女がこの街にいるから、っていうのもあるけどな」


「お、やっぱりか! もしかして、合コンの帝王を卒業させた彼女か!?」


 その言い方、やめてくれ……。


「そうだよ。だからここに来た。これで満足か?」


 橋本はにやりと笑って「今度紹介してくれよ」と俺の肩をたたいた。




 

 定時にオリエンテーションが終わり、俺はやっと自分の机へ戻った。


 ひかりちゃんはもう、帰ったようだ。
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