とりかえっこしようよ



「ひかりちゃん、今までよく頑張ったね。辛い思い出なのに、話してくれてありがとう」


 カフェで食事しながら、お互いの空白期間の話をした。



 いっくんに認めてもらえただけで、今までの辛い気持ちやどろどろした思いが浄化された気がした。



「俺なんて、何も知らずにのほほんとしてて、カッコ悪……」


 そう言いながら、今までのことを話してくれた。


 鹿児島のこと


 模試のランキングで私を見つけたこと


 北大生になったこと


 私が市役所に就職したと聞いたこと


 そして、どうしても私と同僚になりたかったと告げられた。



「どうして?」


「指切りしただろ?忘れた?」


「覚えてるけど……」


「もう一度、ひかりちゃんとハリーに会うためだよ」



 それとも、市役所の前でずっとストーカーしてる方が良かったかな?

 と、いたずらっ子のような表情を浮かべたいっくん。


 思わず笑った私を見て


「綺麗になったね」


 と照れながらお世辞を言ってくれた。


「いっくんこそ、カッコいいよ……」


 背が高くて、スーツもジーンズも似合う。


 シルバーフレームの眼鏡越しに見える眼は、昔のまま優しい。


 顎のラインや鼻筋はすっきりシャープで、子どものころの愛らしさはない代わりに、知的な大人の男性の顔をしてる。


 7歳のいっくん、写真の中の小学生のいっくんしか知らない私には、眩しすぎるよ。


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