とりかえっこしようよ





 聞こえた言葉の意味が、すぐに理解できない。




「も、もう一度言って」



 私だけを見つめて。





「ひかりちゃんが好きだ」



 いっくんの真剣な目が、甘やかな眼差しに変わった。



 つられて私も微笑む。


 気持ちが通じた瞬間。


 好き。大好き。

 








「こんなところじゃ、まずいよな」


「え?」


「まぁ、色々と、ね……」


 
 何?



「本当はさ、うちに寄って欲しいけど、明日も仕事だし」


「そうだね」


「それにさ、このまま帰せなくなったら困るだろ?」


「うん?」


 ……?


 まさか、とは思うんだけど。


 そ、そういう事なの?


 どうしよう!?




 恋愛超初心者の私には、あまりにも急な展開で……


 ハリー!寝たふりしないで助けて!





「ごめん、今の忘れて!」


 慌てた様子で、いっくんがシートベルトを外してドアを開けた。


「だから、これで帰るよ。また明日」



 ……行っちゃった。


 




 後には、惚けた私と寝ぼけたハリーが残った。








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