とりかえっこしようよ
カフェで食事しながら、お互いの空白期間の話をした。
ひかりちゃんの話を聞くのが、実は怖かった。
きっと、あまり言いたくなかったはず。
辛いことを沢山思い出させてしまったのに、ちゃんと最後まで話してくれた。
強くなったね。
「俺なんて、何も知らずにのほほんとしてて、カッコ悪……」
俺の今までの話なんて、ホント冴えないけど。
鹿児島のこと。もちろん、七海の話は抜きで
模試のランキングで偶然ひかりちゃんを見つけたこと
多分北大に行くだろうと予想して、俺も北大生になったこと
市役所に就職したと聞いたこと。あえて合コンの話は今しなくてもいいと思った。
そして、どうしてもひかりちゃんと同僚になりたかったと告げた。
「どうして?」
「指切りしただろ?忘れた?」
「覚えてるけど……」
「もう一度、ひかりちゃんとハリーに会うためだよ」
それとも、市役所の前でずっとストーカーしてる方が良かったかな?
と、冗談まじりに言ってみた。受付で玉砕した話も。
ひかりちゃん、やっと笑ってくれた。
「綺麗になったね」
きめの細かい白い肌は、涙でファンデーションがすっかり落ちていても綺麗なままだった。
マスカラなんてつけなくても、十分長い睫に彩られた黒目がちの眼。
襟元のフリルが可愛らしい、小花柄のチュニックがよく似合ってる。
「いっくんこそ、カッコいいよ……」
にっこりと笑って可愛いことを言ってくれる。
君にそう言ってもらえるのが、一番うれしいよ。