とりかえっこしようよ
マンションの駐車場に着いた。
相変わらず、沈黙を続けるひかりちゃん。
ごめん。
15年ぶりにやっと逢えたのに、いきなりそんなこと言われたら困るよな。
ひかりちゃんの15年と、俺の15年は違う。
俺が想うほど、ひかりちゃんは俺を待ってはいなかったのかも知れない。
それに、文通をやめたのは俺だ。
俺にも彼女はいたし、ひかりちゃんにだけ待たせるのは酷な話だよな。
謝って、おやすみって言って降りよう。
そのうち、また二人で過ごす時間ができたら、今度こそ気持ちを伝えよう。
シートベルトに手をかけたその時。
「いっくんを、待ってたから。いっくんだけをずっと待ってたの!」
……俺だけを、ずっと待ってた?
「本当に?」
「本当だもん!」
「……良かった。俺だけ空回りしてるかと思った」
素直に、嬉しかった。
やっと、伝えられる。
「こっち見て」
下を向いていたひかりちゃんが、俺の顔を見てくれた。
ほんのり赤くなった頬、戸惑う眼がそこにあった。
15年分の気持ちを伝えた。
「……好きだ」