命の箱
夜叉のごとき顔で
真奈は男を睨む。



「う、嘘よ!でたらめ言わないで!」



「嘘じゃない」


出血多量で朦朧とした意識の中
男は真奈の反論をさえぎる。



「今も君は自分をだんだんと
失っているんだ。


たとえば
この家の電話番号を言えるか?」


男の問いに真奈は
血走った眼を曇らす。



「あれ?え?解らない」
< 138 / 162 >

この作品をシェア

pagetop