Around‐30 譲れない戦い
電柱に貼られた数々の広告チラシ。
わたしの目に飛び込んできた、『出張ホスト』の赤い文字。
背景が黄色いそのチラシに足が止まった。
こんなとき、出張ホストをご利用ください。
話し相手が欲しい、退屈してるとき。
一人で寂しい、仕事に疲れたとき。
一緒にお食事、お買い物、楽しく遊びたいとき。
パーティー、観劇、旅行に、二人で行きたいとき。
ご主人、彼氏にお願いできないとき。彼氏代行・父親代行も。
貴女が男性を必要とするとき、愛が欲しい。
どんな時でも。
まずはお電話ください!!
出張ホスト…。
どんな時でも…。
気づいたら、携帯電話のボタンを押していた。
すぐに繋がった電話の相手は、元気に受け答えする。
『お電話ありがとうございます。出張ホスト、CHARAでごさいます』
「えっと…、明日とかでも大丈夫なんですか?」
恐る恐る受話口に言葉を放つ。
『もちろん大丈夫ですよっ!時間は…』