Around‐30 譲れない戦い
日曜日。昼下がりに帰って来た智を見据えた私。
はにかんだように笑ったあと、ソファーにずっしり腰を下ろした。
文句言いたげな私の視線にも気づかない智は。
「髪染めようかな~」
呑気に髪を摘みながら上に目を寄せた。
目は窓に移り、外の景色を嬉しそうに見る。
「うっわ、雪降って来た。今晩出動間違いないね。まぁ俺には関係ないか~。ちょっと山下に電話してみよっ」
とかなんとか言って、ポケットから携帯を取り出し耳に当てた。
「もしもし?今晩さ~、除雪出動じゃないの~?え?俺は専門外だから。いや、そうなんだよな~、年明けすぐ排雪なんだよな~、参ったな~」
参ってるのは私なんだけどっ。
楽しげに電話の相手と話す智を睨み続ける私。
雪が降っただけで喜ぶのは、仕事柄除雪や排雪業務に携わってるから。
警備が好きなくせに仕事は選ぶみたいで。俺には関係ないだとか、俺は専門外だから。と、難癖をつける。
これで31歳なんだから、聞いて呆れる。