Kiss me please!
「望!」

翌日、いつもの待ち合わせ場所に行くと琉が手を振っている。

待たせたかと慌てて駆け寄る望に琉が訊ねた。

「ちょっと時間ある?」

「えっ?」

「俺、昼メシ食ってないの。よかったら付き合ってよ」

もしカノジョがいてもご飯ぐらいはいいかな…。

「うん」

望は頷いた。








店内を案内されて席に着くと望は何だか落ち着かなかった。

こうやって一緒にいるのは初めてだ…。

いつもは待ち合わせて、その後すぐ人目のつかない所でキスするだけ。

それが目的なんだから終わればさっさと帰る。

だから改まってこうしていると落ち着かない。

望の胸の内を知らない琉からは余裕が感じられる。

「こんな風にしてるのって初めてだな」

望は内心を見透かされたようで目をそらして頷いた。

「望?」

「あっ、ご飯来たんじゃない?」

いつもと違うシチュエーションに狼狽えている自分をごまかすように言った。

周りの女性客が琉をチラチラ見ている。

たしかにカッコイイもんね…。

その琉の前に座っている望は、女性客達から注がれる痛い視線に落ち着かなげにジュースを飲んでいた。
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