Kiss me please!
望が元彼に別れを告げられた日。

琉は望達の隣の席にいた。

男の方は背を向けていて顔は見えなかったけど、望の顔はよく見えた。

涙一つ溢さず、怒る風でもなく淡々と別れ話をしていた望を見て、気の強い女だなと変に感心して目が釘付けになる。

望が席を立った後、何となく気になって後を追うように席を立ってしまった。

あそこじゃ平気な顔をしてたくせに、交差点を止まる事無く渡ろうとした望の腕を慌てて掴んだ。

怪我をしたのは予定外だったが、真剣に心配する望は可愛くてこれで終りにしたくないと無理難題を押し付けた。



まだあんな男に未練があるのか、男と横にいた女を見た望の顔が一瞬曇ったのが気に入らず、胸の中が無性にイライラした。

そのイライラもあったし、今、望を腕にしてるのは自分だとの独占欲に、一度口づけたら離したくなくなって、一日一回の約束を破った俺は当然のごとく望に殴られる事になる。

……望、怒ってんだろなぁ…。

明日は待ち合わせ場所に来ないかもしれない…。
< 14 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop