Kiss me please!
ようやく追い付いた頃には二人ともずぶ濡れだった。

「望…。どうしたんだよ?」

雨の中、立ち尽くしている望の後ろ姿に声をかけた。
元彼にフラレた時も、無理矢理キスした時でさえも泣いていなかった望が泣いている。

琉はどうしていいかわからず、望を後ろから抱きしめた。

「…もう、琉とキスしない…。出来ないっ!」

望の言葉に琉は困惑するばかり。

「何でだよ?」

「琉の事…もう割り切れなくなったよ」

「割り切る必要ないだろ?」

「私にはあったんだもん。彼氏でもない人とキスするんだよ?割り切らないと出来ないよ」

「じゃあ、俺を彼氏にすればいいじゃん」

思いがけない事を言われてつい琉に振り向いてしまった。

「な、何言ってんの!カノジョいてるんでしょ?!そんな事…」

「カノジョいるなんて一言も言った覚えないけど?それに彼氏とならキス出来るんだろ?」

言葉に詰まった望の頬を両手で包む。

「俺、望が好きだよ。最初から。だからキスしたくてあんな事言った」
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