「俺とキスしてみない?」
手持無沙汰になった俺は、そのまま中庭に足を運んだ。

りんごもいないのに、今さら教室に行く気はない。

窓の外から保健室をちらっと見ると、りんごではない人影が映った。

養護教諭かもしれない。

もう、入学式は終わったのか……。

別に、何の感慨もないけど。

ただ、ますます教室に足を運ぶ気が失せただけ。

中庭に着くと、当然ながら人影はない。

中庭と言っても、広いこの学校のこと。

ちょっとした散策が出来るほど、広い。

俺は、茂みに囲まれた、石造りのベンチに寝転んだ。

天気がいいせいか、暑いくらいの陽気になってきている。

ひんやりとした石の温度が心地よい。

「……っつたく、何だ、あの女は……」

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