「俺とキスしてみない?」
きょとんとして、泣きやむりんご。


口をぱくぱくさせて。


ぼんやりと、空中をさまよう視線が、俺をしっかりとらえて。

あ、あ、と何度か呻いて。


「ぁ、ぁそびじゃ無かったの」


「遊びじゃない、本気」


「だ、誰に?」


「そりゃぁりんごに決まってる」


「果物の方じゃなくて?」


「正真正銘。桃白りんごだけど?」


なんか、この問答も、慣れてくると楽しいな。

だんだん理解できてきたりんごが、おたおたするのも、見ていて面白い。

……かわいいなあ。

何だか、胸の中があったかいものでいっぱいになる。

初めてりんごに逢った時みたいに。
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