「俺とキスしてみない?」
たぶん、俺は自分でもわからないくらい、やさしい目でりんごを見つめていた。

笑おうなんて思わなくても、自然と口の端が緩む。


りんごは沸騰したやかんみたいに真っ赤になって。


……!


ふわっと、力なく倒れる。

俺は、さっきは躊躇した手を、今度は迷いなく伸ばして。

りんごの体を受け止めた。


「もう倒れんなよ」

その手に、力を込めて。


「さっき十分倒れたってのに
 また倒れる気?」

ギュッと、りんごの体を抱きしめる。

「ッッ……」

わたわたと身をよじるりんご。

その顔は、相変わらず完熟リンゴ。
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