風の吹くままに。 〜短編時代小説〜
反論の余地を無くして、小さく項垂れた。
「諦めたの?つまんないね。じゃ、その人運んで。」
この人はいつもそうだ。
「御意。」
仕方なしに言うことに従う。そうでもしないと、今にも酷いな目に合いそうだ。
「しかし、こやつ…」
道の端に倒れていたのは、
見たこともない、不思議で可笑しな着物を纏った奴だった。
その上、あちこちを怪我していて血まみれになっている。
「これは…早く、手当てをしなければ…大事に至るかもしれません。」
すると頭は考えるように、顎に手を当てた。
「ふーん、じゃあ宿に急ごうか。」
頭がそう言ったということは、やっぱりこいつを気に掛けてるのか。
それにしても、こんな怪しい奴に興味を持つなんて…
さすが、俺達をまとめる頭だ。素直にそう思った。
「早くしなよ、太一。」
名前を呼ばれ、しかも急かされた。
ぐずりたい気分だが、しょうがないなと思い、妖しい奴を肩に乗せた。
意外な事に凄く軽かった。
「れ、怜様。こいつ凄く軽いのですが…」
驚いた事を素直に言ってみると、またにこりと笑われた。
「…だって、それ…女でしょ?」
然も当然と言うように、さらりと告げた。
驚き過ぎて、背中に乗せた奴を落としそうになった。
「な、なんですと!!?」
その後は放心状態で頭の後を着いていった。
頭についてはずっと機嫌が良かったが。
―――――不思議だ。