風の吹くままに。 〜短編時代小説〜
誰かの声が聞こえてきた、
何だか、揉め事のような感じ。
瞼の裏側に陽の光を感じて、目を開けようとした。
「…だ、駄目ですってば!!怜様っ…」
―――何が?
「なんで?全然目覚まさないから、僕この子、殺しちゃいそうなんだよねぇ。」
―――こ、殺すって?
「だ、だからって…!!…あ。」
激しく嫌な予感がする。
バッシャーン
それは見事、的中した。
「…っっぬあああ!!」
自分が、女とは到底思えないような声が出てしまった。
寒い、かなり冷たい。
何が起こったの、私…
由紀は衝撃で目をぱちくりさせながら、
自分の状態を確認した。
あぁ、私。なんか水被ってるよ。
「…ふふ、何なの君。やっぱ見た目どおり馬鹿みたいだね。」
「…て、てめぇかぁぁぁ!!」
確信犯であろう彼は、
片手で桶のような物を持って楽しそうに笑いながら
こちらを見下ろしていた。
―――なんて嫌な奴なんだ!!!