風の吹くままに。 〜短編時代小説〜
後悔、先に立たず。
「風の吹くままに、前に進めばいい。…伝えなければいけないこと。本当に大切な事を見失ってしまったら人は生きてはいけないよ。」
死んだ祖父がいつも笑いながらそう語った。
私が中学3年生の時に、
祖父は天命を迎えた。
祖父は大切な事を見失ってしまったのだろうか?
伝えなければいけない事を無くしてしまったのだろうか?
だけど最後まで笑っていた祖父が
そんな想いの欠片をこの世に残してしまったとは思わなかった。
きっともう遣り残すことがなくなったから
瞳を閉じてしまったのだろう。
…――私はそんな生き方がしたいと思った。
後悔なんて、したくない。
だから風の吹くままに、前に進む
時を無駄には過ごしたくない
どんな時でも全力で生きようと
祖父の死んだ日に、
私…長岡由紀はそう誓いました。