風の吹くままに。 〜短編時代小説〜


「じゃぁ、行ってき…」


「気を付けなさいよ、あんたどんくさいから。」


母がにっこりと笑う。

段々引きつる口元を、私は押さえながら家を出た。



今日は高校入試の日だ。



全てをこの日に掛けて…と言うわけではないが、

とにかくたくさん勉強した。自分の出来る事の限界を覚えるくらいに。



「…えーと、承久の乱が…1221年。んで鎌倉幕府が〜…あああ!!!やべぇ、忘れるし。」



バスを待ちながら、単語帳を見て一人でぶつぶつと呟く。

はたからみれば変質者のようだ。


頭の中に詰め込んだ単語やら、年号やらを忘れてしまわないように単語帳や参考書を捲る。


そうやって私が難しい文字の羅列と格闘している時だ。



「うわぁーん、ママぁー。」



「…??」



< 4 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop