風の吹くままに。 〜短編時代小説〜
「じゃぁ、行ってき…」
「気を付けなさいよ、あんたどんくさいから。」
母がにっこりと笑う。
段々引きつる口元を、私は押さえながら家を出た。
今日は高校入試の日だ。
全てをこの日に掛けて…と言うわけではないが、
とにかくたくさん勉強した。自分の出来る事の限界を覚えるくらいに。
「…えーと、承久の乱が…1221年。んで鎌倉幕府が〜…あああ!!!やべぇ、忘れるし。」
バスを待ちながら、単語帳を見て一人でぶつぶつと呟く。
はたからみれば変質者のようだ。
頭の中に詰め込んだ単語やら、年号やらを忘れてしまわないように単語帳や参考書を捲る。
そうやって私が難しい文字の羅列と格闘している時だ。
「うわぁーん、ママぁー。」
「…??」