風の吹くままに。 〜短編時代小説〜
声のする方を見れば、まだ幼い男の子が道路の真ん中で泣き叫んでいる。
足元にボールが転げているのを見て、由紀はきっとボールを追いかけて転んでしまったのだろうと推理した。
そこに一台のワゴン車が差し掛かる。
…――危ないっ!!
由紀は全身が冷たくなっていくのを感じた。
男の子は足を怪我している為に動けず、ただ泣くばかりだった。
もう距離が無い、間に合わないかもしれない。
ワゴン車を運転している叔父さんは男の子に気付いておらず、よそ見運転をしていた。
このままじゃ…っ!!
由紀は助けようと道路に飛び出した。
「…もう、大丈夫だか…ら。」
息切れで肩を上下させながら、呼吸を整える。
鼓動が早くなるのを止められない。
男の子の手を取り、
向こう側の道路に行こうとするが…間に合わなかった。
もうワゴン車はすぐ近くまで差し迫っていた。
「…っ!!」
視界が一瞬、フラッシュしたように光る。
眩しい…――
このままじゃ、男の子も危険だと悟った由紀は、
その子を助けようと、必死でタックルし向こう側へと押した。